心豊かに自らの道を切り拓く意志を持った人を育てたい
「人生で重要なのは生きることで、生きた結果ではない」
「人が旅するのは到着するためではなく、旅行するためである」
これはゲーテの名言としてよく取り上げられるものです。中学高校時代は人生の中で、最も濃密に自らと向き合い、表に見えるか否かは別にして、心の疾風怒濤の中で「旅をする」時期と言えるでしょう。この時期にどのような仲間とどのような出会いをし、どのような体験を積み重ねたかは、その後の一生を左右すると言っても過言ではありません。その一瞬一瞬には何ものにも代え難い価値があるのです。
中高の6年間は日数にすればおよそ2200日。生徒たちがその一日一日を誠実に生きることによって、自らの個の力で、あるいは仲間と共に生きる中で、人間的な感性を豊かにし、深い優しさと広い視野を身に付けていってくれることを願います。私たちはそのために全力で、鴎友学園で学ぶ一人ひとりを支援していきたいと考えています。
私たちは誰一人として、自分一人の力だけで生きていくことはできません。毎日の衣食住はもちろんのこと、精神的にもどれほど家族や仲間に助けられていることでしょう。時には理解されなくて寂しい気持ちになったり、怒りを感じることもあるでしょうが、そのような気持ちでさえ次の希望につながっているのです。日々のお互いの「響き合い」が積み重なって形になり、歴史が作られてきたとも言えます。
鴎友学園は1935年に府立第一高等女学校の同窓生が母校の創立50周年を記念して行った事業の一つとして創立されました。当時の校長であられた市川源三先生の教えが、生徒の心に響き、この世田谷に学びの場ができました。今まで鴎友学園を支えてくださったすべての方のお力で、今日も創立以来の校訓「慈愛と誠実と創造」は色あせることなく鴎友の教育の根底を支えています。そして私たちは「まさに今という時代を創造的に生きていく人」を育てるにはどのような教育活動が求められているのかを、常に模索しています。そこには既存の価値観にとらわれず、他者の尊厳を大切にしながら良い意味の自由を認め合い、その人の持っている内面性を肯定的に受け止め引き出していくという姿勢があります。
残念ながら、いつの時代も次代を担い社会で活躍する人たちには、明るいことばかりが待っているとは限りません。しかし、鴎友学園には特色ある授業の他にも、さまざまな行事や体験学習があります。必ずやどの生徒にも活躍の場があるはずです。これらを通して蓄えた力が、困難に出会ってもそれを克服するエネルギーになるでしょう。
生徒たちが鴎友学園で多くのことを学び、お互いの知恵と勇気を出し合い、多くの人と協力しながら生きることのできる、力強く心豊かな人に育っていってほしいと心から願っています。

校長 西川 邦子

